2021.07.05

外国人介護職員を雇用できる4つの制度の概要①:EPA・介護【動画有り】

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:昨日は送迎業務でした)

現在、外国人介護職員を「フルタイム」で雇用できる制度としては、「EPA・介護」、「介護」、「技能実習」、「特定技能」の4つがあります。(1週間で28時間以内のパート勤務であれば「留学」もあります)

今週はそれぞれの制度の特徴を少し掘り下げて取りあげたいと思います。

初回は『EPA・介護』にフォーカスします。


【EPA(経済連携協定)とは】

“Economic Partnership Agreement”の略称で幅広い経済関係の強化を目指して、貿易や投資の自由化・円滑化を進める協定です。様々な分野と国々とで締結されていますが、外国人介護福祉士(と外国人看護師)の受入れに関してはインドネシア、フィリピン及びベトナムの三カ国です。インドネシアからの受入れは2008年度、フィリピンからの受入れは2009年度、ベトナムからの受入れは2014年度からそれぞれ開始されました。これまでに 5,063 名の介護福祉士候補者(以下「EPA介護福祉士候補者」という。)を受け入れ、985 名が介護福祉士資格を取得しています。(2019年 10 月1日現在)なお、EPA・介護は、経済活動に関する二国間の連携強化が目的であり、介護分野の人材不足解消への取り組みとして行うものではありません。この流れとして、労働市場に悪影響を及ぼさないという観点から各国ごとに受入れ人数の上限が設けられており、令和4年度に関しては、各国それぞれ 300 人が上限となっています。


【候補者要件】

介護・看護の知識や経験に関して一定の要件(看護学校・看護課程の卒業・修了 or大学・高等教育機関卒業+母国政府による介護士認定)を満たす外国人が、現地で半年から1年程度日本語研修を受けてから入国します。入国前に必要な日本語能力は、インドネシア・フィリピンが日本語能力試験 N5 程度以上、ベトナムは N3以上となっています。


【マッチングと受入調整機関の支援】

外国人応募者と介護事業所のマッチングは、公益社団 国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受入調整機関として担っており、上記で云うところの現地での日本語学習の前後で、候補者と事業者の双方の意思を尊重した採用が行われています。なお、受入れ人数には上限があり、求人登録をしたすべての事業所がマッチングするわけではなく、また、事業所側からの求人登録申請の受付についても年に1度、1カ月程度の期間しかないといった様々な制限があります。


【制度の枠組み】

入国(在留資格は「特定活動(EPA介護福祉士候補者)」するとまず2.5~6カ月間の日本語や介護の基礎に関する研修を受けた後に、介護事業所で雇用され、現場での研修を続けます。(なお、現場研修において、候補者の学習支援に必要な経費に対する国や地方自治体による各種補助制度有り)入国から4年目に介護福祉士国家試験を受けて介護福祉士の資格取得を目指します。国家試験に合格すれば、在留資格が「特定活動(EPA介護福祉士)」となり、更新申請することにより無制限で在留期間の延長が可能になり、家族の帯同(本人と同居し、かつ、その扶養者となる配偶者及び子について「特定活動」のビザ申請が可能)も認められます。国家試験不合格の場合、以前は帰国の選択肢しかありませんでしたが、現在は「特定技能」に切替えることで、切替から最長5年間、日本に在留することが可能になりました。また、勤務できるサービスの種類は、国家試験合格前は訪問系サービス以外ですが、国家試験合格後は、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能になります。配置基準に含めることが可能になる期間は日本語能力試験N2以上の場合は雇用してすぐに可能ですが、その他の場合は雇用して6か月経過後に可能となります。夜勤に関しては、候補者の場合、雇用して6か月経過もしくは日本語能力 試験 N 1または N2合格であれば即可能です。介護福祉士資格取得後であれば、当然夜勤は可能です。


【EPA介護福祉士候補者の国家試験合格率:ミステリー?】

外国人が介護福祉士国家試験を受験する際、『日本人とまったく同一条件』だと思われるがちですが、実際には、試験内容は同一ながら、「ふりがな付き試験問題+筆記試験時間の延長(220分→330分:1.5倍)」の選択が可能で外国人受験者のほとんどがこちらを選択しています。直近(令和2年度)の試験結果をみると、受験者数953名に対して合格者440名と合格率は46.2%となっています。(日本人を含めた全受験者の合格率は71%)

興味深いのは、フィリピンとインドネシアの合格率が35%前後であるのに対し、ベトナムの合格率が90%を超えているです。ベトナムは他の2国と比べると総受験者数こそ少ないのですが、合格率が突出してこれほどまでに高い理由はなぜでしょうか…。

参考:『第33回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果


【最後に】

以上、「EPA・介護」に関しては、制度的にはいろいろと有利な点が多いとはいえ、外国人介護人材の雇用を考えた場合、受け入れ上限とマッチングに関する様々な制約を考えた場合、大きな変更が無ければ、この制度が今後も大きく伸びる可能性は少ないように思えます。


今回のblogの解説動画です(画像をクリックしてください)

外国人介護職員を雇用できる4つの制度の概要①:EPA・介護:blog解説


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