米国務省 人身売買報告書 日本は2021年版でも“Tier2”のまま
こんにちは。
ケアネットワーク協同組合の元木です。
(↑注:昨日は急な業務が入って更新できませんでした。申し訳ありません💦)
今回は「米国務省 人身売買報告書 日本は2021年版でも“Tier2”のまま」というテーマです。
【世界(少なくとも米国)は技能実習制度を“悪”とみなしている】
先日(2021年7月27日)のblog《日経新聞『(社説)技能実習は速やかに廃止を』から考える制度の今後のあり方》も技能実習制度をネガティブにとらえるものでしたが、今日も同様にネガティブなblogになります(スミマセン)
少し前に比較的大きく報道されていたので、耳にした方も多いでしょうが、2021年7月2日付の共同通信のHPを紹介します。
『米、日本の技能実習を問題視 国務省が人身売買報告書』
記事リンク:https://nordot.app/783475530682630144
『7月1日、米国の国務省は、世界各国の人身売買に関する2021年版の報告書(人身取引報告書)を発表し、日本については国内外の業者が外国人技能実習制度を「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」として問題視。政府の取り組みは「最低基準を満たしていない」として4段階評価で上から2番目のランクに、昨年に引き続き据え置いた』というものです。
【人身取引報告書とは】
そもそも記事の元になっている「人身取引報告書」とはどのようなものでしょう。原典は 「Trafficking in Persons Report」という名前で、米国が2000年に制定した「人身取引被害者保護法」(TVPA)に基づき、人身取引に関する米国の国際的な取り組みとして2001年以来まとめている報告書で、今年で21回目を数え、世界188カ国が対象となっています。
人身取引報告書の2017年から2021年の原典は こちら で閲覧できます。また、「在日米国大使館と領事館」のHPには、2021版の「日本に関する部分」の日本語の訳が掲載されており こちら から閲覧できます。
【人身取引報告書のランキングシステム】
「4段階評価」といいましたが、4段階は「Tier1」、「Tier2」、「Tier 2 Watch List」、「Tier 3」という名前で分かれています。《“Tier”は「層、段階、列、段」といった意味です》
それぞれ、人身売買被害者保護法(TVPA)で概説されている基準への準拠に基づいて、各国を以下のように分類しています。
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Tier1:政府がTVPAの最低基準に完全に準拠している
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Tier2:政府がTVPAの最低基準に完全には準拠していないが、それらの基準に準拠するために多大な努力を払っている
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Tier 2 Watch List:政府がTVPAの最低基準に完全には準拠していないが、それらの基準に準拠するために多大な努力を払っているが、Tier 2の中でも「要注意」
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Tier 3:政府が最低基準を完全に遵守しておらず、そうするための重要な努力をしていない
2021年版での各層の代表的な国を挙げてみます
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Tier1:米国、イギリス、フランス、カナダ、フィリピン、韓国etc.
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Tier2:日本、イタリア、ドイツ、インドネシア、インド
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Tier 2 Watch List: ベトナム、マレーシア、香港、南アフリカetc.
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Tier 3:ロシア、中国、北朝鮮、キューバ、シリア、イラン
【日本の地位】
上記にも挙げたようにG8(主要8ヶ国首脳会議)構成国の階層をみると、Tier1が4ヵ国、Tier2が3ヵ国、Tier3が1ヵ国と分かれています。その国が持つ特有の事情や社会背景はそれぞれ異なるので、一概に言えませんが、個人的には「先進国」という呼ばれるには「Tier1」に属して欲しいと思います。
日本の場合、過去10年を振り返ると2018年と2019年の2年間のみがTier1に属していましたが、それ以外の8年はずっとTier2にとどまっています。
【日本がTier1に属せない理由】
人身取引報告書における日本に関する記載では技能実習の弊害が大きく取りあげられていますが、取りあげられているポイントは技能実習だけでなく、日本人と外国人の両方に対する性的な搾取を目的とする人身売買(sex trafficking)や、技能実習制度以外での外国人の強制労働(forced labor)といった問題にも及びます。またそうした現状の指摘だけでなく、政府や行政が加害者に対する取締り・被害者の保護の両方の対策が弱いだけでなくむしろ放置しているという認識で指弾しています。こうしたことが日本のTier1への昇格を阻んでいます。
【最後に】
先日のblog《日経新聞『(社説)技能実習は速やかに廃止を』から考える制度の今後のあり方》の日経新聞社説の指摘もそうでしたが、今回の人身取引報告書で指摘された問題点は現状では存在していることを真摯に受けとめた上で、技能実習制度の中に身を置く者として、少なくとも自分たちは指摘された問題点(もしくはそれに類する点)などには当てはまらない公正な業務を遂行したいと思います。
私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。
よろしくお願いします。(M)