2021.08.25

「介護助手等普及推進員(仮称)」制度が発足-介護助手は普及するのか-【動画有り】

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:夕方、暗くなる時刻が早くなりましたね)

さて、今回は『「介護助手等普及推進員(仮称)」制度が発足現場の負担を軽減するための介護助手は普及するのか』というテーマですが、外国人材に限定した内容では無く、介護現場全体を俯瞰する気持ちでお読み頂ければ幸いです。

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【介護助手等普及推進員(仮称)制度が新設】

2021年08月21日付 時事ドットコムに「「介護助手」普及へ推進員 求職者と事業所にPR―厚労省」という記事が掲載されました。

オリジナル版

記事より一部引用(『赤文字』)しながら、内容を紹介します。

冒頭で『厚生労働省はベッドメークや食事の配膳などを担う「介護助手」の雇用促進に向け、「介護助手等普及推進員(仮称)」制度を新設し、各都道府県の福祉人材センターに配置する方針を固めた。』とし、『推進員の人件費など、都道府県への補助経費を2022年度予算概算要求に盛り込む方向で検討している。』と報じています。また、このようなポストを新設したのかという理由は『介護助手は、施設などで高齢者に触れる身体介助を行わず、清掃など周辺業務に従事する。特別な資格は必要ない。ただ、求職者や介護事業所の間でもそれほど浸透しているとは言えず、同省は業務内容などの周知が重要と判断した。』と分析しています。結びには『介護助手が増えれば、介護福祉士らの負担が軽減され、その分高齢者のケアに集中できる。専門性を発揮できる環境が整い、人材定着にもつながるとみられる。』という言葉で締めています。


【介護助手とは】

介護助手を語る前に「看護助手」について触れてみたいと思います。病院における看護助手は、国家資格を持つ看護師(もしくは 都道府県知事発行の免許である准看護師)に対して無資格の作業補助者で、病院内における医療行為以外の様々な業務を担います。医療行為に関しては線引きがハッキリしているため、職務分掌も明確に分けることが可能です。看護助手の歴史は古く、1958年の基準看護の承認要件において、「看護助手」が位置付けられ、1992年医療法の改正により、「看護補助者」が位置付けられました。2010年診療報酬改定では看護補助者の配置を評価する「急性期看護補助体制加算」が新設され、病院体制の中の一部として組み込まれています。

そして「介護助手」ですが、看護助手のように制度上の承認要件としての位置付けは無く、いつ頃からどのように始まったのかも正確にはわかりません。また、施設介護における介護職員としての勤務は無資格でも可能なので、看護師(准看護師)に対する看護助手の関係と違って、資格で区別されるものではありません。では、介護助手とはどのようなものなのでしょうか。『福岡県保健医療介護部高齢者地域包括ケア推進課介護人材確保対策室』が発行している「介護助手の手引き」からいくつか引用させて頂きながら説明します。まず『介護助手とは、介護保険施設・事業所等において、介護職員をサポートする職種で、比較的簡単な単純作業の部分を担います。』と定義しています。イメージとしては直接介護(排泄、入浴、移乗)以外の周辺業務でしょう。また、「介護助手の手引き」では介護助手の担い手を元気な高齢者をメインに想定しているようで、『高齢者の就労や健康づくりの実現』も大きな目的の一つに挙げています。


【なぜポストを新設してまで、介護助手を普及させようとするのか】

では、なぜ今、行政は今まで無かったポストを新設してまで、「介護助手」を普及させようとしているのでしょうか。前段でも挙げましたが、大きな理由は2つあると考えます。1つは現場における介護職員が直接介護に集中しやすい環境を作ること。もう1つは元気な高齢者の就労や生き甲斐、健康づくりの支援があると思われます。2つともニーズや注目度は比較的高いので、行政としては「介護助手」を普及させることでアピールしたいと思われます。近い将来「介護助手等普及推進員(仮称)」が実際に全国に設けられ、活動したら、どれほどの効果や成果があるかは未知数です。ただし、いままで「介護助手」という手段を想定したことが無い(or知らなかった)介護事業所運営陣に、そういった手段もあるということを知らしめる効果は少なくともあると思います。


【介護職員と介護助手の境界があいまいな事への危惧】

「周辺業務を積極的に担ってもらえるスタッフ(介護助手)が常時いてくれる」ことに対して現場の介護職員は歓迎することでしょう。ただし、それはあくまでも介護職員が配置基準を満たした上での加配であることが最低条件になるのではないでしょうか。前々段でも『施設介護における介護職員としての勤務は無資格でも可能』と記しましたが、現状では「介護職員」と「介護助手」を明確に分ける手だてはありません。「介護助手」を「(配置基準上の)介護職員」として見なしていても、実地指導上は問題無しです。「介護職員の採用がうまくいかないから、手っ取り早く集められる介護助手で穴埋めしよう」と考える介護事業所経営陣が現われる可能性も否定出来ません。介護職員不足の隠れ蓑として介護助手が利用されないように、『介護助手は配置基準上の介護職員と認めない』とするような行政からの明確な通達が必要な気がします。これは、介護職員の就労環境を守る意味でも、介護の質の担保という意味でも重要な気がします。


【最後に】

「介護助手」を配置さえすれば、介護現場の環境が劇的に良くなるとか、元気な高齢者の就労問題が一気に解決する…などと考える人は誰もいないでしょう。ただ、介護助手が介護現場で周辺業務に従事してくれることで、正規の介護職員の負担が減るのはありがたいことです。また、元気な高齢者が介護助手として、現場で共に働くことで、従前のスタッフが新たな刺激をもらえることも充分想像できます。ちょうどそれは、外国人材を受け入れることで、職場に化学反応が起きることに似ているような気がします。


今回のblogの解説動画です(画像をクリックしてください)

介護職員の離職率が過去最低に 外国人雇用は拡大:blog解説


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