データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか)
こんにちは。
ケアネットワーク協同組合の元木です。
(↑注:先日、2回目の新型コロナワクチン接種を受けました)
今回は『データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか)』というテーマです。
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データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか):アップデート版
【実習生失踪 一部受け入れ停止へ】
2021年6月13日の午前、大手ポータルサイト Yahoo!のニュースで最上位に掲示されていた記事のタイトルは『実習生失踪 一部受け入れ停止へ』でした。
記事の中身は 朝日新聞の独自取材記事で「外国人技能実習機構(OTIT)は、ベトナムの大手送り出し機関5社が日本に送り出した実習生の中から、多数の失踪者が出しているという理由で、この5社からの今後の新規受け入れを停止する方針を、ベトナム政府に文書で伝えたことがわかった」というものでした。
【技能実習と失踪者数の推移】
様々な意見がある技能実習制度の中でも、ある意味、悪いイメージの象徴が実習期間中に所属事業所から黙って去る『失踪者』ではないでしょうか。では日本に入国した技能実習生の何人(どれくらいの割合)が失踪しているのでしょう。出入国在留管理庁からのデータを元にグラフ化してみました。
2015年から2019年のデータになりますが、失踪者数に着目すると2015年の5,803人から2019年の8,796人と5年で約1.52倍へと急増しています。ただし、入国した技能実習生全体数を見てみると2015年の264,630人から2019年の517,232人と5年で約1.95倍と、増加率では失踪者数以上に急増しています。技能実習生数における失踪者数のパーセンテージも5年間では最高で2.19%、最低で1.69%と、「率」的にはある意味ほぼ一定の割合に収まっていることが見て取れます。
【技能実習と失踪者数の割合】
上記グラフからもわかるように、技能実習生総数に占める失踪者数の割合は過去5年間を通じて毎年ほぼ2%程度で変化はありません。ただし、技能実習で入国する全体数が大幅に急増して、これにともなって失踪者数も増加しているというのが実情であるということがわかります。
技能実習制度における失踪者問題を矮小化するような意図はまったくありませんが、
失踪者数の増加≠総数における失踪者の割合の増加
では無いことは理解しておく必要はあるかと思います。
【介護分野における失踪】
外国人技能実習制度への介護職種が追加されたのが2017年11月でした。当組合では2019年7月を皮切りに現在まで80名の技能実習生が入国していますが失踪者は0(ゼロ)です。『期間が短いから』といってしまえばそれまでかもしれませんが、「介護」に限っていえば自分の知る範囲で「失踪者が出た」という実例を見聞きしたことはありません。
技能実習における「介護」職種に失踪者が出にくい理由は
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他の職種に比べて専門性が高いため介護を志望する実習生自身のモチベーションが高い。
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他の職種と比べて、社会福祉法人や医療法人といった法人比率が高く、労働環境が整っている割合が高い。
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受け入れに際して『介護』に限定した固有要件(日本人労働者と同等の賃金設定、受け入れ人数枠が厳しい 等)が設けられている
といったことが影響していると思われます。
【最後に】
1981年の「外国人研修制度」発足から1993年に設けられた「技能実習制度」はそれなりに長い歴史があります。そうした歴史の中で制度の隙間をかいくぐったり、違法なことに平気な団体(送出し機関、監理団体、事業者)や、そもそも違法就労を目的として入国してくるような技能実習生など様々な要素が絡んで、トラブルが起きています。世間的には「技能実習制度」の評判は決して良くはありません。ただ、悪く報道される現場よりもはるかに多い、多くの技能実習の現場では良好な環境で技能実習が行われていることも事実です。
技能実習に「介護」分野が追加される際には、そうした過去の様々なトラブルを克服すべく制度設計されていることも確かで、他の職種にはない複数の固有要件追加でハードルが上げられており、その結果、受け入れ事業所と実習生の双方にWin-Winな関係を築いてくれるものとなっています。
現在、外国人介護技能実習生を受け入れた介護現場では確実に彼/彼女達の存在感は確実に大きくなっています。
今回のblogの解説動画です(画像をクリックしてください)
データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか):blog解説
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