2021.06.23

技能実習生アレコレこぼれ話(「えっ!、カナダに行きたいの?」 編)

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:通勤時間は電車で片道40分くらいです)

今回は『技能実習生アレコレこぼれ話(「えっ!、カナダに行きたいの?」 編)』というお話しです。


【監理団体をやっているといろいろあります…】

当組合は2016年に協同組合として法人設立し、2018年に技能実習生の監理団体の認可を受けました。まだまだ歴史が浅く、経験も少ないのですが、そんな中でも「監理団体」としての業務を行っていると、ビックリするような、笑ってしまうようないろいろなエピソードに出会います。そんなエピソードをこのblogでも少しご紹介させて頂きます。

今回は当組合の「栗城」の経験に基づいたエピソードをご紹介します。

↓ 栗城が撮影した巡回訪問の様子です(今回のエピソードとは無関係)


【実習生からの突然の報告で絶句】

当組合の1期生として、2019年7月にフィリピンから入国したDさんは技能実習2号として、元気に実習をこなしています。今年の4月、そんな彼女の在留資格の2度目の更新のために彼女の在留カードとパスポートを預かりに行った時のことです。モジモジとする彼女から「チョット、オ伝エシタイコトガアリマス…」と告げられました。

 ワタシ:「どうしたの?  なんでも言って!(軽い気持ちで)」

 Dさん:「実ハ、Canada(カナダ)ニ Work Permit(就労ビザ)ヲ申請シマシタ」

 ワタシ:「!!!(絶句)」


【Dさんはなぜカナダに就労ビザを申請したのか】

海外から日本へ技能実習生として来日した技能実習生は、期間満了までは日本以外(母国への一時帰国はOK)移動はできません。それなのにDさんはなぜ、カナダに就労ビザを申請したのでしょう? 実は彼女には現在カナダに在住するお姉さんがいて、そのお姉さんから「日本での技能実習が終われば、あなたもカナダにおいでよ」と誘われて、

来年の技能実習2号を満了したら、日本からカナダへ移住して働きたい

考えていたようです。


【カナダの就労ビザ取得へのハードル】

フィリピンからカナダへ就労ビザを申請する場合、いくつかの書類を添えて申請しなければならないのですが、大きな条件(ハードル)が3つあります。

① 現在就労していること

② 一定以上の収入と貯金がある

③ カナダで就労先があるもしくは確定している

まだまだ要件はあるようですが、最低この3つはクリアしなければなりません。

Dさんがカナダへの就労ビザを取得しようとした理由は、

日本の実習を終えてフィリピンへ帰国してから就労ビザ申請しようとすると、上記の①と②がクリアできない可能性が高い

ので、日本での技能実習中に提出したというのが真相でした。


【フィリピン国内の就労事情】

フィリピンの新卒での就職については、出身大学のランクで決まります。フィリピンの有名大学を卒業していなければ、良い就職先はないというのが現実です。また、一般の大学を卒業した場合、正社員として雇用してもらうのは困難で、収入など条件の良くない企業へ就職するのが当たり前です。有名大学を卒業して良い就職先に入社した場合の月収は、平均2万ペソ(約4万6千円)くらいで、一般大学卒業した方の月給は平均1万ペソ(約2万3千円)くらいです。また、フィリピンでは市中の労働者の多くは、一日13時間労働で平均500ペソ(約1,150円)しかもらえず、仕事自体も毎日あるのかないのかもわからない、不安定な状況で収入は安定していません。

家族のため、生きていくためにも安定した収入が必要と考えるフィリピン人は自然と海外へと就労機会を求める人が多く、現在では『国民の10人に1人が海外に移住(※)』している状況です。

※参考:『世界最大の労働力輸出国フィリピンの現状と課題(前編)


【結局、就労ビザの申請はどうなったのか】

Dさんから、カナダに就労ビザを申請したハナシを聞かされて、絶句しましたが、しばらくして、Dさんから申請結果を聞きました。結果は「Denied(拒否)」。技能実習生ビザで来日しているため、他国移動もビザ取得も当然できません。審査したカナダの担当官もさぞかしビックリしたのではないでしょうか。


【最後に】

就労ビザの制度を知っている者からすれば、今回のDさんの申請は無謀というか浅はかともいえる行為だったかもしれません。

ただ、Dさんなりにいろいろと考えて、実際に申請までしてしまった行動力や貪欲さは、

「賞賛」とまではいえないでしょうが、なにか別の意味の「たくましさ」

を感じてしまいました。

 

…ただ、そのたくましさはあと1年ちょっとの残りの技能実習に充てて下さい、お願いします🙏


私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。

 よろしくお願いします。(M