2021.06.24

外国人労働者との共生社会のあり方(外国人のワクチン接種は日本人の後 ?)【動画有り】

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:本日は午後から外部研修を受けます)

今回は先日見かけた新聞記事《「外国人接種は日本人の後 南牧村がワクチン接種で」》を題材に外国人労働者との共生社会のあり方を考えたいと思います。


【小さな村の大きな問題】

2021年6月19日付の信濃毎日新聞に「外国人接種は日本人の後 南牧村がワクチン接種で」という記事が掲載されました。【オリジナル版Web魚拓版

長野県南佐久郡南牧村という住民約2,900人の村があります。主要産業は高原野菜の栽培ですが、この村の農業を支えるのは外国人技能実習生で、その数は人口の1割超を占めるまでになっています。小さな村なので新型コロナウイルスワクチンの高齢者の優先接種は比較的早めに終わり、6月19日から64歳以下を対象にした接種を始めることになったそうです。そこで村民にどのような順番で接種するかという問題が浮上しました。


【決まった順番】

村は64歳以下の接種について、12~17歳は個別接種で対応し、それ以外は土曜日に集団接種で進める方針を決定。集団接種の1日の上限は400人程度でグループ分けが必要ということで、2回接種のスケジュールは以下のように決まりました。

 6月19日と7月10日:基礎疾患がある日本人と56~64歳の日本人

 7月17日と8月7日:40~55歳の日本人

 8月21日と9月11日:18~39歳の日本人

 9月4日と9月25日:外国人


【順番はどのように決まったのか】

上記を見て頂ければわかりますが、日本人が基礎疾患の有無と年齢順であるのに対して、外国人は一括りにされています。想像ではありますが、この「外国人」とは、ほぼ全員が「外国人技能実習生」でしょう。そうなると基礎疾患を持つ者は少ないでしょうし、年齢層も比較的低いと思われます。日本人との国籍での区別が無かったとしても恐らく順番は低位だったかとは思います。ただ、一番最後にする必要はあったのでしょうか?


【行政側の言い分】

まず、外国人としてグループ分けしたのは「村によると、通訳などのために監理団体に立ち会ってもらうことや、1日の接種上限を考慮し、外国人をまとめて接種するのが適当と判断した」とのこと。そして、外国人が最後になったのは「村全体の接種の段取りをする中で決まった。(さまざまな監理団体を通じて外国人が集まっているため)先に接種しようとすると手続きに時間がかかり、村全体の接種が遅くなる」と南牧村の村長は説明しています。


【実際はいろんな声があった】

実際の所は『役場内の議論でも、外国人が最後になることに「差別に当たるのではないか」との声もあった』とのこと。また、記事で『受け入れ農家の男性(67)は「村の農業の原動力は外国人。先に接種してもいいのではないか」と話した』とあるように、外国人が最後ではなく、外国人を優先接種すべきという声があがったことも紹介されています。

ちなみに本記事とは別ですが、『南牧村まち・ひと・しごと創生人口ビジョン』という資料によると、『南牧村は2006年以来、農林業に携わる外国人技能実習生の受け入れを積極的に行って』おり、外国人技能実習生との関係は15年以上もの長期にわたっていることがわかります。


【正解が無い問題なのでしょうが】

記事において『フィリピン人の実習生男性は今回の村の対応について「接種できるのであれば時期は問題ない」と話す』とあるように気にしない外国人が紹介されています。確かにそういう実習生もいるでしょうが、私などは今回の立場を自分に置き換えた場合、「外国人という理由で接種が後回しにされた」と思うと決して気分が良いとは思えません。記事の締めは、外国人困窮者らへ医療支援を行うNPO法人事務局長の「共生という意味では、区別なく接種していく方法を考えても良かったのではないか」という声の紹介でした。何が正解なのかは正直、わかりません。ただ今回の『役場内の議論でも、外国人が最後になることに「差別に当たるのではないか」との声もあった』とあるような問題には、外国人技能実習生を受け入れる事業所や監理団体は、慎重な対応が求められるでしょう。


【最後に】

今回の記事を掲載した信濃毎日新聞は少し前から「五色のメビウス(いつついろのめびうす)」という長期連載を展開しています。

『日本で、信州で働く外国人が増え、 地域の産業や私たちの暮らしを支えています。 なのに、今、涙をのんでいる外国人が少なくありません。 その姿が私たちに見えているでしょうか。表が裏になり、裏が表になる「メビウスの輪」。「無限の可能性」も意味します。日本人と外国人の関係、そして私たちと世界の 関係も同じではないでしょうか。 長期連載「五色のメビウス」は、多様な国・地域をルーツとする人々と築く社会のありようを考がえます。』

長野県の事例が中心ですが、問題の本質は地域に関係無く、読み応えのある記事がたくさんあります。無料会員登録では読める記事の本数に制限がありますが、興味があれば、ぜひ御覧ください。


今回のblogの解説動画です(画像をクリックしてください)

外国人労働者との共生社会のあり方(外国人のワクチン接種は日本人の後 ?):blog解説


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