2021.07.27

日経新聞『(社説)技能実習は速やかに廃止を』から考える制度の今後のあり方

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

💦💦💦

(↑注:毎日の通勤だけで汗だくです)

今回は「日経新聞『(社説)技能実習は速やかに廃止を』から考える制度の今後のあり方」というテーマです。

関連blog:批判集中の技能実習制度 ーしかし誤った報道も多くないかー


【日経が社説で技能実習制度廃止を訴える】

2021年7月26日 日本経済新聞が『技能実習は速やかに廃止を』という社説を掲載しました。

記事リンク(※)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74163610V20C21A7PE8000/

(※)有料記事扱いですが、無料会員登録をすれば読むことができます。

社説本文を抜粋(『赤文字』)しながら、内容を紹介します。

まず『人手不足を補うため海外から人材を受け入れるだけ受け入れ、劣悪な労働環境は放置というのでは無責任のそしりを免れない。外国人技能実習制度のことだ。』と述べたうえで『いっこうに改善がみられないこの制度はすでに行き詰まっている。速やかに廃止し、外国人材の受け入れ体制を立て直すべきだ。』とストレートな提言をしています。

2021年7月19日のblog《【外国人技能実習生の失踪 実地検査は約20% 状況把握進まず】にみる問題点》でも取りあげた、会計検査院からの外国人技能実習機構への指導に関連して『技能実習制度の監督機関として17年に発足した同機構は、調査の人員不足が指摘されてきた。業務効率化などで実効性のある手を打たず、役割を十分に果たしてこなかった責任は重い。』と断罪し、『国際貢献の名のもとに、実習生を安い労働力ととらえる建前と本音の使い分けは、もはや限界だ。世界からも技能実習制度は人権侵害の問題があるとして批判されている。廃止し、19年に新たな外国人材の受け皿として設けられた特定技能制度に一本化すべきだ。』技能実習を廃止して、特定技能に一本化せよとの方向性を付けて言及しています。 また、技能実習制度がこのような状況におちいった理由を『問題の根源は、海外からの労働力の調達を優先し、外国人の働く環境の整備や生活支援を二の次にしてきた政府の姿勢にある。』と断定し、政府の各種取り組みには一定の理解を示しつつも『問題は実行のスピードの遅さだ。』と主要因を分析、最後は『支援策が掲げる「共生」への道のりは遠い。外国人を単に労働力とみる意識を除くことが先決だ。』 という言葉で締めています。

内容もさることながら、全体を通じて非常に強い口調と勢いを感じる文章になっています。


【日経の社説という“二重の衝撃”】

外国人技能実習制度に関しては以前から様々な批判や提言が寄せられていましたが、今回は『日本経済新聞』が『社説』で批判・提言したということで、二重の衝撃といえるでしょう。まず、日本の経済界を代弁するような立場にある『日本経済新聞』が技能実習制度に関して今回のような批判・提言をおこなうということは「経済界が技能実習制度を望んでいる」という言い訳がもう通用しないことを意味します。また、一般的に新聞社の論説委員全員で記事内容を確認する『社説』において発表したということは、議論を経て充分に練られた上での主張ということを意味します。


【今後の展開予想】

日経が技能実習制度廃止を社説で提言した」ことは事実ですが、もちろん、すぐに制度が廃止されることではありません。ただし、以前から「失踪者」・「長時間低賃金労働」・「ハラスメント」等のキーワードに代表される「技能実習制度の悪いイメージ」がさらに悪化する方向になるのは間違いないと思います。


【疑問:技能実習制度<特定技能制度 なのか】

今回の社説の主張において、個人的に強い違和感をおぼえたのは「技能実習制度を廃止して、特定技能制度に一本化すべき」という趣旨の部分です。確かに「労働者」としての立場を明確にした特定技能制度であれば、『国際貢献の名のもとに、実習生を安い労働力ととらえる建前と本音の使い分け』という部分は解消されるとは思いますが、顕在化している技能実習制度の悪しき部分までもが、制度の一本化のみで全て解消されるとは思えません。技能実習制度であれ特定技能制度であれ、顕在化している悪しき部分を解消する方向に制度を変更することこそが、求められているのではないでしょうか?


【最後に】

以前のblog《データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか)》において世間的には「技能実習制度」の評判は決して良くはありません。ただ、悪く報道される現場よりもはるかに多い、多くの技能実習の現場では良好な環境で技能実習が行われていることも事実です。』と書かせて頂きました。手前味噌かもしれませんが、介護分野における技能実習制度は現状、比較的うまく機能していると信じています。(もちろん、全く無問題とは言いません)

「建設業」などの失踪者を多数発生させ続けている特定の職種に関して技能実習制度の適用を除外するなどの措置ならともかく、全職種における技能実習制度を廃止せよというのはいささか乱暴な提言でのように感じてしまいます。


私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。

 よろしくお願いします。(M