他国における『海外労働者の受入れ』の現状③:マレーシア
こんにちは。
ケアネットワーク協同組合の元木です。
(↑注:本日の大阪の予想最高気温は37℃です)
他国はどのように海外労働者(※)を受入れているのかを、国別でお伝えするシリーズ、
に続く、最終回となる今回は「他国における『海外労働者の受入れ』の現状③:マレーシア」というテーマです。
※ここでいう「海外労働者」は、「専門職・高度人材(専門人材)」ではない「非専門職・非熟練労働者(単純労働者)」にフォーカスします。
【マレーシアの発展と外国人労働者:歴史】
マレーシアはポルトガル→オランダ→イギリスと宗主国は変ったものの、長い植民地時代を経て、第二次世界大戦時には一時的に日本に占領されました。戦後イギリスの支配下に置かれましたが1963年にマレーシア連邦が成立し、1965年にシンガポールが分離独立して現在のマレーシアとなりました。(現在もイギリス連邦に属しています)1960年代~1980年代においては外国人労働者を多く「送り出し」ていましたが、石油、天然ガス、天然ゴムといった豊富な天然資源の開発と国内の経済成長とともに外国人労働者を「受け入れ」る割合が徐々に高くなりました。マレーシアは急速な工業化によって経済発展を遂げましたが、広い国土(約33万平方キロメートル:日本の約0.9倍)に対して、少ない人口(約3,270万人:2020年)であり、経済成長をする上で外国人労働者は必要不可欠でした。
【マレーシアでの外国人労働者受入れの概要】
マレーシアにおいて外国人労働者は欠かせない存在ですが、その反面、「マレーシア人の雇用第一(Malaysians First)」という政策を掲げ、外国人労働者を雇用の調整弁とすることで、マレーシア人労働者の雇用の安定を図っています。半熟練・非熟練労働者については、二国間協定(二国間覚書)にもとづき、定められた職種(製造業、建設業、農業、プランテーション、鉱業・採石業、サービス業)と定められた国(インドネシア、タイ、フィリピンなど15ヵ国)における就労が許可されており、対象国によっては性別(例:フィリピン人は男性のみ就労可能)の限定や就労できる職種も一部限定(例:インド人は製造業に就労不可)されています。また、マレーシア人労働者の雇用確保の観点から産業ごとに当該事業所で就労するマレーシア人に対する非熟練外国人労働者の比率に基準が設けられています。働ける期間は1年で、毎年更新を行い、最長10年までの延長が認められます。(後述の人頭税を更に支払うことで最長で13年までの延長が可能)事業主は人的資源省の労働力局及びジョブズ・マレーシア(政府が運営するオンライン職業紹介ポータルサイト)に求人情報を登録し、マレーシア人労働者で求人が充足できなかった場合に、外国人労働者の雇用許可の手続きが可能となります。加えて、外国人の雇用にあたって、事業主は業種別に定められた人頭税(levy)を支払わなければなりません。
【マレーシアでの外国人労働者雇用プロセス】
① 外国人労働者を雇用しようとする事業主は、人的資源省労働力局及びジョブズ・マレーシアに求人登録を行う。
② 1ヶ月程度の募集期間の後マレーシア人労働者が得られなかった場合、外国人労働者の雇用許可のための確認書を労働力局から取得する。
③ 内務省への必要人数、送出国等の申請、認可の後、外国人労働者付加金を支払い、外国人労働者雇用認可の証明を得る。
④ 事業主は、外国人労働者の採用決定後、当該外国人労働者の雇用について、送出国大使館の認証を得る。
⑤ 入国管理局に当該外国人労働者の照会ビザ(Visa with reference)及び労働許可を申請する。
⑥ ⑤の認可後、入国のため、外国人労働者送出国のマレーシア大使館・領事館で照会ビザを取得する。
⑦ 外国人労働者入国の際には、入国管理局において、雇い入れ企業自ら入国手続きを行う。当初は30日の滞在パスが発給され、この間に会社は当該労働者の健康診断を行い、適格という診断を得た上で、労働許可の申請を行う。
【マレーシアでの外国人労働者受入れの問題点】
マレーシアにおいては上記のとおり合法的な外国人受入れのプロセスはあるものの、伝統的に不法就労する者が多いのが現状です。正確な人数は把握不可能ですが、合法就労者の2~3倍の不法就労者がいると推計されています。政府としても悩ましい問題ではあるものの、既成事実として不法就労者を排除すると経済に悪影響が出てしまうため、不法就労する外国人の合法化を過去、何回も行っています。
また、近年の新型コロナの影響で国内産業及びマレーシア人の雇用に大打撃を受けたため、2020年6月に政府は「全業種における外国人労働者の新規雇用を2020年いっぱい凍結する」と発表し、また同年7月、「外国人労働者の雇用を建設業、プランテーション、農業の3分野のみに限定する」との声明を出し、産業界から大きな非難を浴びています。
【最後に】
今回を含めて過去3回にわたって韓国、台湾、マレーシアの外国人労働者受入れの概要を調べてみました。それぞれの国に歴史や事情があって、その特徴もありますが、人口に対する外国人労働者の受け入れ比率に関しては、韓国は約4%、台湾は約3%と低いですが、マレーシアは(不法就労者が多くて正確には把握できませんが)少なく見積もっても10%は超えると思われます。
その一方、日本は昨年、外国人労働者数は約172万人で過去最高を更新したものの、人口(約1億2600万)との比率では約1%強でしかありません。今後益々、外国人労働者の比率は上がってくるでしょうが、その時は全産業が同じように上がるのでは無く、ハッキリと上がる産業もあれば、さほど上がらない産業もあるといった、多極化が起きるように思います。
本稿では以下のHPを参考、一部引用させて頂きました。ありがとうございました。
『東南アジア地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向(マレーシア)]』
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/15/dl/t5-03.pdf
『アジア4か国の労働施策 第 2 章 マレーシア – 厚生労働省』
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/13/dl/04.pdf
『第1部 アジアにおける外国人労働者の受入れ制度の特徴と課題』
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2007/documents/081_01.pdf
『マレーシアの外国人労働者』
http://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Download/Overseas_report/pdf/1407_kumagai.pdf
『マレーシア基礎データ』
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malaysia/data.html
『知っておきたいマレーシアの労働事情「マレーシアを支える外国人達」』
https://www.digima-japan.com/column/market/2277.html
『外国人労働者の雇用を3分野に限定する方針、産業界から強い反発(マレーシア)』
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/08/5a61912d0ab92c89.html
『外国人労働者数 約172万人で過去最高を更新 しかし増加率は大幅に低下』
https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=14341
私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。
よろしくお願いします。(M)