2021.08.16

外国介護人材のコストは本当に高いのか? 上がり続ける介護職の採用コストを考える【動画有り】

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:お盆も終わりましたね…自分の盆休みは無かったですが(笑))

 

今回は「外国介護人材のコストは本当に高いのか? 上がり続ける介護職の採用コストを考える」というテーマです。

関連記事:『やはり足りなくなる介護人材【コロナ禍が収まれば人材の奪い合い?】


【外国人介護人材は「安くはありません」】

まず、最初にお伝えしておきたいのは「外国人介護人材を活用して、人件費(コスト)を低減したい」とお考えで、この記事をお読みの方は、ここから先の文章はお読みにならないでください、時間の無駄です。はっきり言います。

外国人介護人材は「安くはありません」

そもそも、外国人介護人材の給与は制度上、日本人と同等以上が求められますし、加えて、監理費や支援委託費といった日本人介護職であれば無用な経費がかかるので、日本人介護職と比較すれば掛かるコストはどうしても高くなります。しかしながら、外国人介護人材を導入する事業所は確実に増えていることも事実です。安くは無いのに、外国人介護人材が活躍する現場は増えている…これは何を意味しているのでしょうか。


【外国人採用のハードル】

外国人を雇用したことが無い事業所の採用担当者の方とお話しする際、外国人採用に関する不満・不安を尋ねてみると、いろいろありますが、挙げられことの多いのは、順不同で

  • 言葉や文化が異なるので、意思疎通ができない(のではないか)

  • 現場の日本人スタッフに抵抗感がある(のではないか)

  • 何かと費用がかかる(のではないか)

の3つです。

最初の2つの不満・不安はある意味「気持ち」の部分ですが、『費用』に関しては「お金」に関わる部分なので、少し質が異なります。


【日本人介護職の採用コストを考えてみる】

序段で《外国人介護人材は「安くはありません」》と言いきりましたが、それでは日本人介護職は「安い」のでしょか? 確かに監理費といったランニングコストは外国人介護人材にのみにかかる費用です。ただし、イニシャルコストと言っても良い、採用にかかるコストに関してはどうでしょう?介護事業所の数が増えて昔のように介護職員の応募が潤沢でない現在では、日本人の介護職員の採用コストは年々、上がっていると感じられます。日本人介護職の採用にかかるコストをいくつか挙げてみます。

[求人媒体への出稿費用]

昔は紙媒体が中心でしたが、現在では成りを潜め、ネット媒体が中心です。(地方都市では今なお一定の効果があるとのウワサもありますが…)紙媒体、ネット媒体を問わず、基本的には『掲載課金型』のため、採用できてもできなくてもコストがかかります。例えば、50万円かけて出稿した広告2人採用できれば、1人あたりは25万円のコスト。1人採用できれば、50万円のコスト。もちろん全く採用できない場合も(大いに)あり得ます。この場合、費用対効果という意味では、少し乱暴な言い方をすれば「無限大」です。

[人材紹介会社への紹介手数料]

人材紹介会社に支払う紹介手数料は、基本的に雇用に結びついた場合にのみ費用が発生する成功報酬なので、『お金を払ったのに採用できなかった』という事態に陥ることはありません。紹介手数料は『想定年収×パーセンテージ』で請求される場合が多いのですが、問題はこの『パーセンテージ』がジリジリと上昇していることです。少し昔であれば15%~20%が中心でしたが、現在では25%~30%が中心になった感があります。特養や老健といった介護施設の正職員で想定年収360万円ならば25%で90万円、30%で108万円となります。

[派遣職員利用時の派遣費用]

人材派遣の場合も、実際に派遣された場合の実費のみを人材派遣会社に支払うので、無駄な出費は抑えられます。介護職員を派遣してもらう場合は、1時間あたりの単価に勤務時間数を乗じた費用が発生します。また、介護職の場合、「1時間あたりの単価」は派遣される人が保有する資格(「無資格」、「初任者研修修了」、「介護福祉士実務者研修修了」、「介護福祉士」)によって異なります。(派遣される人の介護経験年数等でも変わる場合も有り)。大阪地区を例に取ると、大手派遣会社に介護福祉士資格保有者の派遣を依頼した場合の1時間あたりの単価を2,200円(税込)、正職員並みのフルタイムで勤務したとして1日8時間、月20日間と仮定すると2,200円/時間×8時間×20日間=352,000円。年間で4,224,000円になります。派遣の場合、事業所は派遣される人の社会保険関連の費用は負担しないで済むのですが、それでも、それなりの費用はかかります。


【結局、それなりのコストはかかる】

上記のように改めて書き出して見ると日本人介護職の採用コストも決して安価とは言えません。特に、求人媒体への出稿費用は採用の可否にかかわらず支出しなければならないものなので、費用対効果が読みにくいコストです。「コストを掛ける以上は結果が欲しい」という思いが強くなると、求人広告への積極的な出稿よりも、確実に採用できる人材紹介や派遣の利用を重視する事業所経営者の方も少なくありません。つまり、序段の後半に『安くは無いのに、外国人介護人材が活躍する現場は増えている』と記したのは、外国人介護人材の採用に関して、現在は「人材紹介」に近いカタチであるのが理由の一つではないではないでしょうか。また、それと同時に、『安くは無いけど、高くも無い』もしくは『安くは無いけど、金額に見合った効果がある(期待できる)』と考える施設経営者が増えてきているということではないでしょうか。


【最後に】

昔話になりますが、今から20年くらい年前、私(元木)自身が某介護事業所(老健)の採用を担当していました。当時は介護保険がスタートして3年くらい経過した頃で、「介護職」という職種も大変注目されていました。そんな状況でしたので、採用の基本は「ハローワーク」からの紹介、たまに「とらばーゆ」や地域の折り込み求人広告紙といった紙媒体に求人広告を出稿するくらいで事は足りていました。(それでも、時期によっては人手不足で大変苦労しましたが…)また、人員が充足していて求人情報を何も出していない時期に、事業所の窓口に見知らぬ訪問者が突然現れて「あの、こちらの施設で介護職員として働きたいのですが、求職口はありますか?」いきなり切り出されることが何度もありました。2021年の日本では、想像しづらいでしょうが(笑)


今回のblogの解説動画です(画像をクリックしてください)

外国介護人材のコストは本当に高いのか? 上がり続ける介護職の採用コストを考える:blog解説


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