2021.09.17

移民受け入れ議論が活発化するか? 現状の先行と国民的議論の遅れのズレ

こんにちは。 

ケアネットワーク協同組合の元木です。

(↑注:台風14号の被害がどうか少なくありますように🙏)

 

今回は「移民受け入れ議論が活発化するか? 現状の先行と国民的議論の遅れのズレ」というテーマです。


【楽天 三木谷氏が移民受け入れに関する持論を表明】

楽天グループ株式会社の創業者であり、代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏が、2021年9月16日、自身のTwitterで移民受け入れに関しての持論を投稿し、複数のニュースメディアがこれを取り上げられました。

〈移民政策に対する不安は分かりますが、もはや他に手はないと思いますよ。幕末の攘夷論ではないけれど、現実を受け入れないと。人口減少する国に経済発展はないし、科学技術には国際的なトップクラスの人材を集める必要がある。その上で如何に日本らしさをキープするか。〉


【移民受け入れを積極的に提言する理由】

三木谷氏が移民受け入れに関する持論を表明するのは今回が初めてでは無く、以前から様々な場面で発言されておられます。発言だけにとどまらず、自身が代表理事を務める新経済連盟において、2019年に『移民・共生政策PT』を立ち上げ、『長期的に外国人比率10%程度』という数値目標も掲げ、政府宛に積極的に移民受入れに関して提言しています。

なお、三木谷氏自身が積極的に移民受け入れを提言するのは、将来的に日本では技術者が不足するという問題への強い危機感があるようです。


【「移民」の定義】

国連の国際機関でもある国際移住機関(IOM)は、「移民」を以下のように定義しています。

  • 「移民」とは国際法などで定義されているものではなく、一国内か国境を越えるか、一時的か恒久的かに関わらず、またいかなる理由であれ、本来の住居地を離れて移動する人という一般的な理解に基づく総称

その上で、IOMによると、現在の日本における国際移民の人数は249.89万人総人口に対する国際移民の割合は2.0%と定義しています。(左記の数には技能実習生や特定技能外国人も含まれます)

一方で、日本政府の公式見解はどうでしょうか。

2018年に奥野総一郎衆議院議員が政府に対して「外国人労働者と移民に関する質問主意書」を提出しました。これに対して政府が正式に回答していますが、最初の『わが国における政府の「移民」及び「移民政策」の定義を示されたい。』という質問に対して、『お尋ねの「移民」や「移民政策」という言葉は様々な文脈で用いられており(中略)一概にお答えすることは困難である。』と定義を避けています。また、『その上で、政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えていない。』と、労働力としては必要だが国家を維持するための政策としては考えていないとしています。

 参考:『外国人労働者と移民に関する質問に対する答弁書』質問本文 答弁本文


【移民問題は現実が先行して、制度や国民的合意は遅れ気味】

定義はさておき、現実問題として今の日本では、都市部においてはコンビニやファーストフードの店員さんが外国人であることは珍しく無く、地方では技能実習生などの外国人材が地域農業を主力として引っ張っている例もたくさんあります。《参考記事:『外国人労働者との共生社会のあり方(外国人のワクチン接種は日本人の後 ?)』》 日本全国において、外国人材が様々な場面において我々の日常生活に深く関わって、欠かせない役割を担っています

2019年からは「技能実習」とは異なる「労働力」と、目的をはっきり定義した特定技能制度も開始されましたが、一部の例外(「特定技能2号」)を除けば、家族の帯同も認められませんし、在留期限の制約(最長5年)もあります。技能実習の監理団体として現在入国している実習生たちの希望を聞いてみると、「可能であれば、ずっと日本で働きたい」という声は数多くあります。介護分野において、現行制度で彼/彼女たちが日本で永続的に働く方法は、介護福祉士資格を取得するしかありません。 確かに特別優秀な幾人かはこの難関をクリアできるかとは思いますが、希望者全員がクリアするにはハードルが高すぎると言わざるを得ません。個人的には介護福祉士資格取得以外にも永続的に働くことができる制度を早急に作って欲しいと願ってやみません。


【最後に】

「移民を受け入れる or 受け入れない」という問題が過去において、国民的議論とならないばかりか、あまり取り上げられなかった理由は、「移民の受け入れ」が雇用や社会構造の変更、社会保障予算の問題といった大きなことから、地域社会や教育といった身近なことまで、多くのデリケートな問題を含んでいるため、国会議員も一般人である我々も、誰もがなんとなく先延ばしにしてきたからだと思います。ただ、前段で述べた、「外国人材が様々な場面において我々の日常生活に深く関わって、欠かせない役割を担っている」現状を持続可能にする(もしくは発展させる)ためにも、もう避けては通れない時期にさしかかっている気がしてなりません。


私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。

 よろしくお願いします。(M