批判集中の技能実習制度 ーしかし誤った報道も多くないかー
こんにちは。
ケアネットワーク協同組合の元木です。
(↑注:今日はちょっと怒りモード💢で書いてます)
今回は「批判集中の技能実習制度 ーしかし誤った報道も多くないかー」というテーマです。
関連記事:日経新聞『(社説)技能実習は速やかに廃止を』から考える制度の今後のあり方
データから見る「技能実習制度」における失踪者の数と割合(介護業界ではどうなのか)
【とりあえず技能実習制度は叩く(?)】
仕事柄、技能実習制度や特定技能制度を含む外国人雇用に関する報道やニュースには幅広く目を通しています。技能実習制度に関してはネガティブな報道も多く、辛い気持ちになることもありますが、明らかに事実と異なっていたり、的外れであったり、制度に関しての無理解な報道もたびたび目にします。「とりあえず技能実習制度は批判する」という流れに乗っているだけに感じる記事も少なくないような気がします。
【ラジオのニュース番組にて】
2021年9月21日、ニッポン放送 NEWS ONLINというwebメディアに『見直す時期に来ている「外国人技能実習制度」 ~実習先を斡旋する監理団体が2億円の所得隠し』という記事が掲載されました。
記事の元になったのは、同日放送された、ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」というラジオ番組内での、アナウンサー飯田浩司氏とコメンテーター有本香氏とのニュース解説のやりとりを文章化したもののようです。記事においては、冒頭で、先日愛知県の監理団体などが国税局の税務調査を受け、2020年3月期までの3年間で計約2億円の所得隠しを指摘されていた事件に触れた後、技能実習制度の現状(?)と問題点を指摘するのですが、そこの部分を引用します。
有本)かなりの過重労働が課されているわけです。現場の話を聞くと、外国から来たばかりの若い人たちが、物覚えもいいと思うのですけれど、「そんなに仕事をしているのか」というほど働かされている。
飯田)かなりの長時間労働であり、仕事もキツイ。
有本)時間も長いですし、覚えなければならないことも多いわけです。単純にただ肉体労働をしているというわけではない。例えばコンビニでの仕事も、相当複雑な労働です。
飯田)いまは決済方法もいろいろあるし、公共料金も含めて、多様なものを扱うようになっています。
有本)そうなのですよ。それを技能実習という、よくわからない名目で安い労働力として使っているのが実態です。根本的に考え直さないと、こういうことが起こる。そして過酷な労働から逃げる外国人が、今度はよくない方向に走ることになります。
飯田)あるいは日本が嫌いになって帰るとか。
有本)私はやはりこの制度を見直すときが来ていると思います。
このblogを読んで頂いておられるような方であれば、もうお気付きでしょうが、現行の技能実習制度《※》において技能実習2号移行対象職種(85職種・156作業)の中に『コンビニエンスストア』の文字はありません。つまり、
技能実習制度の下で日本のコンビニで働く外国人は一人もいません。
明らかに間違った認識に基づいて、技能実習制度を非難しています。
《※》ただし、昨年6月、自由民主党は特定技能の対象業種にコンビニエンスストアを追加するように求める提言を行っています。参考:「特定技能にコンビニ追加を」 自民、外国人在留で提言
【制度への無理解で誤ったバッシングを広めている】
私は上記の実際の番組を聴いてはいません《注:下記【追記】参照》ので、記事に書かれていない部分でどのようなやりとりがあったのかはわかりません。ただ、技能実習制度を詳しく知らないにも関わらず、大手ラジオ局で放送されている番組内で「この制度を見直すときが来ている」と断言するコメンテーターが現在の日本には存在するという事実があります。このコメンテーターの方の思考回路を想像するに、おそらく単純に、
コンビニで外国人従業員を多く見かける
⇓
コンビニは複雑な労働で大変そうだ
⇓
安い労働力として使われている(に違いない)
⇓
この外国人従業員は技能実習生として働いている(に違いない)
⇓
技能実習制度を見直すときが来ている
ぐらいのものでしょう。
しかし、この明らかに間違った認識に基づく発言が、公共のラジオ番組という権威の中で発せられることで、リスナーの多くは「そうだ、技能実習って見直さなきゃね」と思い至るでしょう。
業界に身を置く者として、現行制度に問題点がある点は認めますし、それに対する批判に関しては真摯に耳を傾ける所存です。しかし、批判をするなら何よりもまず制度への正しい理解と事実に基づいたものであらねばならないと思います。
【最後に】
上記のとおり、このコメンテーター 有本香氏の発言は間違っています。
ただ、「昨日の今日」ということもあって、現在(2021年9月22日16時30分)の時点で「ニッポン放送 NEWS ONLIN」や「飯田浩司のOK! Cozy up!」のホームページでは訂正や謝罪のお知らせは無いようです。個人的に、訂正や謝罪のステートメントを出すのか否か、もうしばらくは注視していくつもりです。
【追記】(2021年9月23日)
「飯田浩司のOK! Cozy up!」にて、ポッドキャストとして当日の内容が公開されていたので自分も聴いてみました。内容的には文書化された記事の通りです。
番組内の経過時間《14:35〜18:17》の中で記事の内容が確認できます。
私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。
よろしくお願いします。(M)