介護現場における人材の安定化-負のトライアングルを脱するために-
こんにちは。
ケアネットワーク協同組合の元木です。
(↑注:大阪は10月中旬でも暑さが残っています💦)
今回は「介護現場における人材の安定化-負のトライアングルを脱するために-」というテーマです。
関連記事:『職場環境を整える手段』としての視点を持った外国人材の受入れを
【離職率は低下したとは云うけれど…】
先日の記事《介護職員の離職率が過去最低に 外国人雇用は拡大ー「介護労働実態調査」よりー》では、介護職員の離職率が過去最低にまで低下したニュースをお伝えしました。2職種(訪問介護員+介護職員)の合計離職率は14,9%で、この数字は全産業の平均離職率15.6%をも下回りました。介護業界としては喜ぶべきことなのですが、個人的には業界全体でまんべんなく離職率が低下したというよりは、「離職率が非常に低い事業所」と「(依然として)離職率が高い事業所」の2極化が進んだ結果であると感じています。
【介護事業所の離職率が高い理由】
介護事業所の離職率が高い理由として、よく挙げられるのは『待遇(主に給与)が良くない』、『3K(きつい、汚い、危険)を超える7K(きつい、汚い、危険、帰れない、厳しい、格好悪い、くさい)』などと言われることが多いです。あからさまな否定はしませんが、そもそも介護業界を志望して入職してくる場合はこれらの理由は程度の差こそあれ、覚悟しているのが普通です。そのため、これらの理由が決定的な要素になることは案外、少ないものです。実際の離職理由として一番多いのは『人間関係(の悪化)』です。
【人間関係が離職理由になる理由】
介護、とりわけ施設介護での業務はチームとしておこなう部分が大きな比重を占め、ほかの職員との連携が多い仕事です。また、チームそのものは、数人から10数人程度の少ない人員で構成されることが多く、シフト制を採用していても、多くの時間を密に過ごすことが多くなります。そのため、相性のよくない人との連携・協業においては、苦痛を長時間感じてしまう場合が多くあります。また、小さな法人や事業所の場合は、配置換えや転勤といった機会が少なく、外的要因で人間関係に変化が生じる可能性は低いと言って良いでしょう。ですから、チームの中に入って、いったん人間関係が悪化すると、個人レベルで解消するには「離職」が手っ取り早い解決策になります。《ただし、これは介護業界特有の問題というより、飲食業や宿泊業といった離職率が高い業界共通の問題でもあります。》
【介護現場の負のトライアングルを脱する方法】
離職率の高い職場では下記の図のような、『負のトライアングル』のような状況に陥りがちです。
ステージ① 新しい人材がすぐに辞めて定着しない
⇓
ステージ② 現場がバタバタしていて教育に手が回らない
⇓
ステージ③ 新しい人材を雇い入れても教育できない
⇓
《ステージ①に戻る》
このトライアングルから脱するためには、一度どこかのステージで踏みとどまって、次のステージへの移行を阻止する必要があります。
序章で触れた「令和2年度介護労働実態調査」でも明らかになっていますが、介護分野の離職者の勤続年数は3年未満が多く、それが介護現場に人材が定着しない大きな理由として考えられます。「逆転の発想」になりますが 、例えば外国人技能実習生は最低でも約3年間は同一事業所で実習を続けます。もちろん、新規採用を外国人技能実習生のみで充足させるようなことは不可能ですが、「少なくとも約3年間は辞めない」スタッフが数名存在するということは現場の安定化に寄与します。離職率の高い事業所は「介護現場の安定化」という視点で、一度、外国人材の導入を検討する価値はあると言えるでしょう。
【最後に】
全世界的なコロナ禍にあって、当組合を通じて日本に入国した外国人材は2020年12月30日が直近で、もう10カ月以上も前になります。しかしながら、その後も面接等をおこなっており、事業所から内定をもらって、あとは入国を待つのみという外国人材は、今も増え続けています。
日本では、徐々に感染者数が減少しているとはいえ、無条件・無制限に今すぐに渡航者を受け入れるというのは、当然、論外です。しかしながら、ワクチンの接種と徹底した検査、一定期間の隔離等を組み合わせた厳格な手順を踏んだうえでの中長期滞在者の受け入れに関してはそろそろ、議論を進めてもらいたいと願っています。
私たちケアネットワーク協同組合は「介護人材に育つ環境づくりのお手伝い」を合い言葉に、これからも組合員事業所様を最大限にバックアップして参ります。
よろしくお願いします。(M)